照柿(上) (講談社文庫)価格: 680円レビュー評価: 4.0 レビュー数:19 合田刑事シリーズ第2弾!! 「マークスの山」よりもずっと、合田刑事の内面に踏み込んだ、人間ドラマの意味合いが強い作品になっていると思う。 ホステス殺しを追う合田刑事が偶然居合わせた列車轢死事故。そこで出会った佐野美保子に対する執着。幼なじみの野田達夫との再開。実は達夫は美保子と不倫の関係だった。 警察内部と被疑者の両方の問題から、なかなか決着の付かない捜査。圧倒的なリアリティを持つ高村節は本作でも健在でした。 達夫が勤める工場の炎に似た、エンジ色の「照柿」という色が執拗と言えるほど ...さらに詳しい情報はコチラ |
晴子情歌 上価格: 1,890円レビュー評価: 4.5 レビュー数:8 青森という片田舎で晴子の目を通した半生を描きながら、その周辺を轟音を上げて動いている政治と世界。それの息吹を語らせることはあっても、それはまだ「晴子情歌」のテーマにはならない。市井の人間や生活と、時代を動かした政治の対比。関係と無関係。人間模様。時代は動いても、野辺地の土間の空気がしんとして動かないように変わらない世界がある。それが昭和という時代か。
筒木坂、土場、野辺地や魚場の船上での圧倒的リアリズムに反し、主人公たちの所在のなさ。高村小説に共通の「ここでないどこか」を茫とあるいは無意識に希求し、自分さえも客観視し突き放しながら放浪する半身に委ねるという有り様。あ ...さらに詳しい情報はコチラ |
半眼訥訥 (文春文庫)価格: 520円レビュー評価: 4.0 レビュー数:9 漫才(吉本興行と思われる)や、収納術、システムキッチンなど著書の硬派なイメージからは程遠い生活くさい題材がとりあげられていてそれだけで興味深い。熱心なファンではありませんが、生真面目さが伝わってくるとともにその生真面目さがほほ笑ましく感じる。
友近や柳原加奈子の人物観察ネタを見せて感想を聞いてみたい ...さらに詳しい情報はコチラ |
照柿(下) (講談社文庫)価格: 650円レビュー評価: 3.5 レビュー数:3 意匠不明な上巻に続く下巻だが、冒頭の嫉妬に駆られた合田が画策の上、達夫の会社を見に行くシーンで呆れて期待が萎む。僅か十数年の宮仕えで歯車から外れようとしている人物を、このような長編小説の主人公に据える必要があるのだろうか。致命的なのは、合田の行動・心理に作者が合理的な説明を与えられない点である。「だから文学的なんだ」と言う言い訳は通用しない。日々の暮らしの中で、自らの努力が報われない徒労感、他者との隔絶感、彼我の持つ能力と享受する果実との落差感、男女の間に横たわる深い溝と連帯感、生きる事の意義への懐疑の念、現実感と非現実感の境目の無い繰り返し。これらは既に書き尽くされているテーマで、合田、達 ...さらに詳しい情報はコチラ |
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マークスの山(下) 講談社文庫価格: 680円レビュー評価: 4.0 レビュー数:24 感想は、ひとことで表すなら、壮大。
女性とは思えない文章の力強さに圧倒され、ぐいぐいのめりこんでいった。
犯人は分かっていて、それを追う警視庁の合田警部補が主人公になり、
彼を取り巻く警察内部の複雑な人間関係、組織というものの真の姿、
非常に緻密に構成された人間ドラマがとても読み応えがあった。
これだけ沢山の人物達の複雑な人間関係を描きながらも内容は薄っぺらくなく、
むしろものすごく重厚でかつリアリティがあり、とにかく凄いのひと言。
精神異常者の犯人であるがゆえに殺人の動機や彼の心情がはっきりし ...さらに詳しい情報はコチラ |
晴子情歌 下価格: 1,890円レビュー評価: 4.0 レビュー数:2 高村薫を読み込んできたファンとしては、これまでの作品と比較してあまりの作風の変化に、最初は違和感を覚えるかもしれない。だからこそ逆に、長年のファンも、この作品から初めて?村薫の小説を読む人にも、斬新な筆致が味わえるだろう。
本書で主人公とされる晴子の出生から青春時代、結婚、そして老いに至るまで、戦前戦後の過酷な歴史の渦に翻弄されたといっても過言ではない。ひとりの女性史として捉えるにはあまりにも重いテーマであるとともに、登場人物のひとりに語らせている外地での戦争体験が、筆者の史観をうかがわせる。
この本の登場人物は非常に多く、また入り組んでお ...さらに詳しい情報はコチラ |
新リア王 下価格: 1,995円レビュー評価: 4.0 レビュー数:4 「晴子情話」・「新リア王」は続編で合田刑事が出るということで入手したが、その評判からなかなか頁を開く勇気がありませんでした。新潮で連載の始まった続編「太陽を曳く馬」で実際に合田刑事が「新リア王」での福澤彰之との関わりを回想するのを読んで、やはり必読テキストと思い頁を開き、あとは一気に読了しました。「新リア王・上」は本山での岡野玲子の「ファンシィ・ダンス」の法戦式を彷彿とさせる場面で楽しめました。そして「下」に入ると、だんだん登場人物達がシェイクスピア劇のように俳優が舞台で喋っているような錯覚に陥って、榮がかわいい爺さんに思えて、わくわくしながら読んでしまいました。
ただ、「晴 ...さらに詳しい情報はコチラ |
照柿価格: 2,100円レビュー評価: 4.5 レビュー数:17 「マースクの山」に続いて刑事の合田雄一郎が主人公。前作のように楽しめるサスペンスであると同時に、合田刑事の私情、内面も入り混じり文学的要素がますます濃くなっている。情景描写は相変わらず豊か。ちょっと長いかなと思わないでもないです。 ...さらに詳しい情報はコチラ |
別冊宝島981号「高村薫の本 」価格: 1,200円レビュー評価: 5.0 レビュー数:2 高村ファンにとってはたまらない本だろう。特に合田雄一郎ファンにとっては「素晴らしいニュース」も含まれているし。ただし、高村薫未読の人や、1冊ぐらいしか読んでいない人にとってはちょっととっつき難いかもしれない。それと、読本にしては詳細な著者年表が入っていないのも不満ではある。しかしそれ以外はおおむね満足一部大満足の出来である。編集の皆さんには「ご苦労様でした」といいたい。 これから秋にかけて「レディージョーカー」の映画化等でまたぞろ高村薫が話題にのぼるかもしれない。しかし基本的にはそれだけでこの本を手に取ると痛い目に会う。私でもまだ読むのは先にしたほうがいいかな、という特集があった。特に冒 ...さらに詳しい情報はコチラ |
地を這う虫 (文春文庫)価格: 470円レビュー評価: 4.0 レビュー数:10 何作か読んでいるのですが、高村薫が女性だとは思いませんでした。
短編も書くんですね。
短編と言えば横山秀夫だと思っていたのですが、この4つの短編集を読んで高村薫が所謂オールラウンドプレーヤーだということが分かりました。
元刑事が主人公なのですが、それぞれ刑事だった頃の癖が抜け切れない或いは、その職業上得た能力を使わざるを得ない状況で、何を思い行動しているのか丁寧に書かれています。
私の一番のお勧めは「父の来た道」です。
権力と言う世界は全く分かりませんが、家族を顧みずに仕事に没頭し ...さらに詳しい情報はコチラ |
黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)価格: 540円レビュー評価: 4.0 レビュー数:16 3年くらい前に初めて読んだにしては物凄い印象を残している作品。
とにかく強盗ものにしても夢のある内容で、手口も普通な術とは一線を画した常軌を逸したもの。他の方も書かれている通り緻密すぎるが故の説明口調が長々続くところはあるがそこは飛ばし読んでしまえばよい。大阪の街の構造を知らない人にとっては面白くない描写がながなが続く箇所もありますが知っている人からしたら頭の中で場所を思い出しながらより一層楽しめる。 ...さらに詳しい情報はコチラ |