飲食男女(おんじきなんにょ)―おいしい女たち (文春文庫)価格: 570円レビュー評価: 4.0 レビュー数:1 人は生きる為に食べるのか、食べるために生きるのか。性欲か食欲かを選ぶのは究極の二者択一であるのは、両者は切っても切れない納豆の糸でつながれたみたいな仲だからだろう。
食べ物を題材にした小説は多々あるが、この本の中のとろろ芋アレルギーを楽しむムズ痒いマゾ女がとろろ好きとしては新鮮だった。実験の協力者がいても試してみるのは痒そうなので想像の領域にとどめておく方がいいと思う。
腐りかけた桃やイチゴジャムの女性の体に直結するビジュアルを持つ食品、それから湯豆腐やのびたそば、おかゆなど生ぬるくて柔らかいものは女体のようにつかみどころがなくてあぶな ...さらに詳しい情報はコチラ |
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怖い絵 (文春文庫)価格: 693円レビュー評価: 4.0 レビュー数:1 ビアズリーのサロメ、ロシア正教のイコン、ベックリンの死の島など、美しく、陰鬱で、官能的な怖い絵の数々を、久世光彦さんの(主に若かりしころの女性関係にまつわる)エピソードとともに紹介します。何が怖いって絵もさることながらこのお話が怖い。久世さんの周りの女たちが怖い。そして、異形のもの達がまだ物陰に潜んでいられる余裕のあった昭和初期の風景は、ここに紹介された絵を飾る場としてまさにうってつけなのです。昨今巷にあふれているようなホラー映画や、SF的な恐怖に物足りなさを感じている人は、この本を読んで、日本的で、どろどろとした、男の、女の、人間の不気味さに新鮮味を感じることができるでしょう。 ...さらに詳しい情報はコチラ |
「時間ですよ」を作った男―久世光彦のドラマ世界価格: 1,575円レビュー評価: 3.5 レビュー数:2 「時間ですよ」が1970年、「ムー一族」が1979年ってことは、TBS「水曜劇場」での久世光彦の活躍って、完璧“70年代”に重なるってことだよね。
久世ドラマって“テレビが一家に一台”の時代のフォーマットだ。しかもコンテンツの幅が拡がり、必ずしも家族各々の見たい番組が一つじゃなくなってきた70年代のフォーマット。親世代は人情ドラマが見たい、子世代はアイドルやお笑いが見たいっていう折衷案。著者言うところの「寄り道」(トリオ・ザ・銭湯や屋根上デートや「ジュリー??」や郷・希林の歌・踊り)をホームドラマに挿入することで、親子共々の欲求を満たすという。久世ドラマの舞台となる大家族、お ...さらに詳しい情報はコチラ |
昭和恋々―あのころ、こんな暮らしがあった (文春文庫)価格: 710円レビュー評価: 4.0 レビュー数:4 作家の山本夏彦氏と、演出家で作家としても知られる久世光彦氏は、ともに近年なくなられた。彼らの連載の乗っていた月刊「諸君」を買うことも無くなった(原因は他にもあるが)。
このい二人が、「諸君」の連載中に、「戦前の昭和」をしばしば取り上げられた。
サンフランシスコ講和条約後に生まれた「アプレゲール」に分かるはずもないが、祖父母から聴いた話と一致している。
世間には、戦前の昭和の20年間は「真っ暗だった」という論評があるが、庶民は、仮に国家の一大事が身近に迫っていても、毎日「真っ暗」で暮らすはずがないと思っていたが、この本で、そのとおりであったことが確 ...さらに詳しい情報はコチラ |
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大遺言書 (新潮文庫)価格: 460円レビュー評価: 5.0 レビュー数:1 私の大好きな俳優森繁久彌はとんでもない好色家である。本書を読んでその感をさらに強くした。共演女優とはすべて関係したのではないか。私はそう睨んでいる。脚本家・小説家の向田邦子まで口説いている。彼女にはふられたが、その理由を森繁が本書で語っている。
そんな森繁が黒人と日本人の混血娘を養女にして面倒をみていたとは知らなかった。そのいきさつが「混血児(あいのこ)」と「海を渡る花嫁」に紹介されている。この二章を読んで不覚にも私の両眼から涙が落ちた。
そのほか抱腹絶倒のスケベ話や感動を呼ぶ話がぎっしり詰まっている。そして、どの話からもビブラートつき ...さらに詳しい情報はコチラ |
陛下 (中公文庫)価格: 720円レビュー評価: 5.0 レビュー数:1 1章の半分も読まないうちにはたと気付いたのだけれど、とても自然に頭の中に情景が組み立てられているのです。例えば、坂があって途中に娼家があって、坂の下の方には酒屋や菓子屋、銭湯がある。坂の上には寺があって、金木犀が植わっている。そういったことが決して説明的でなく、でもしっかり書かれているから誰でも間違いなく位置関係などを把握することが出来る。これは久世氏が演出家だからなのでしょうか、この作品をドラマにしようとしたら迷うことなくセットが組めそう。とにかくドラマっぽいのですね(悪い意味ではなく)。 例外は匂いでしょうか。とにかく匂いに関する描写がたくさん出てくる。金木犀の香り。女郎部屋の消毒薬 ...さらに詳しい情報はコチラ |
百〓先生 月を踏む価格: 1,890円レビュー評価: 4.5 レビュー数:2 主人公である内田百間が、お話の中の出来事から連想した夢を題材に架空の百間小説(ややこしいな)を書く、という主題を軸に物語は展開する。
その架空の百間小説に、おそらく著者は相当苦心したはずである。なにしろ読者に、あの百間が書いたものとして違和感なく受け入れさせなければならないのだから、並大抵ではない。これらの架空百間小説は成功しているものもあれば、そうでないものもある。ただ、物語の後半に行くに従い、確実にその精度は上がってくる。それだけに執筆中の急逝が、惜しまれる。
これは内田百間という人の性格か、それとも著者のある「予感」のなせるわざか、本書には「死」の気配が濃密に漂 ...さらに詳しい情報はコチラ |
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